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Fire in Water

永田康祐映像作品集

発酵=動揺(ファーメント)する文化と歴史たち。世界は、静かにひっくり返る

Selected Video Works by Kosuke Nagata

Translation Zone (2019) / Purée (2020) / 鮭になる(2023) / Fire in Water (2025) / Fish of Empire(2026) / Suddenly This Overview(2026)
Produced and Distributed by: Aggie LLC / Publicity: Risa Takada / Graphic design: Yurie Hata / In cooperation with: Pole Pole Higashi-Nakano, ANOMALY
8月22日(土)より ポレポレ東中野ほか 全国順次公開

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Introduction

世界の見え方が、ふと閃く
アーティスト・永田康祐、
初の特集上映

写真、パフォーマンス、インスタレーション。ジャンルを横断しながら、「食べること」や「翻訳」「発酵」といった身近な営みを手がかりに、人間と世界の関係を問い続けてきたアーティスト、永田康祐。2020年の個展「イート」では、食と身体、他者との関係をめぐる知的で刺激的なイマジネーションを展開。2025年の恵比寿映像祭では、映画作家の小森はるか、小田香らとともに新作を発表するなど、その活動は近年のドキュメンタリーや文化人類学的フィールドワークとも響き合う。

本特集上映では、初期作から最新作までの映像作品を一挙上映。一見ばらばらに見えるテーマは、文化や歴史、人間と環境が絶えず影響し合いながら生成変化する世界の姿へとつながっていく。永田の作品は、「わかりやすい物語」から距離をとり、見過ごされてきた存在や関係に静かに光をあて、私たちの認識の枠組みそのものを揺さぶる。しかし、その語り口はどこか飄々として、心地よいユーモアをたたえている。

世界を見る方法は、ひとつではない。映画館の暗闇で、その新しい視点との出会いを体験してほしい。

Program A

[上映時間 計78分]

Fire in Water

2025年|DCP|41分

脚本・監督:永田康祐 撮影:奥祐司 編集:永田康祐 奥祐司 英語字幕編集:佐藤朋子 製作:恵比寿映像祭2025コミッションプロジェクト委嘱作品[東京都写真美術館]

Fire in Water 場面写真1 Fire in Water 場面写真2 Fire in Water 場面写真3 Fire in Water 場面写真4

日本でも人気のクラフト・マッコリ。その一杯には、知られざる歴史が発酵している。韓国語で酒を意味する「スル」は、「水(ス)」と「火(プル)」に由来するという説がある。泡立つ発酵の様子が、まるで水の中に火が宿るように見えたからだ。永田はこの「水の中の火」というイメージから、日本統治下の朝鮮半島における稲作と酒造の歴史へと分け入っていく。食料増産と税収確保のために導入された技術や制度、米品種、日本式の麹や酵母──。発酵という現象をひとつのメディアとして、遺伝子や微生物、法制度といった目に見えない存在に今なお宿る植民地主義の残響を映し出す。

Fish of Empire

2025年|DCP|15分

脚本・監督:永田康祐 編集補助:奥祐司 英語字幕編集:佐藤朋子

Fish of Empire 場面写真1 Fish of Empire 場面写真2 Fish of Empire 場面写真3 Fish of Empire 場面写真4

日本の南進政策とタイの開発政策を背景に東南アジアへ広がった魚、ティラピア。一匹の魚の移動から、生態系の変容と政治権力が交差する歴史の水脈をたどる。

Suddenly This Overview

2026年|DCP|22分

脚本・監督・語り:永田康祐 制作協力:岩田智哉 監修:飯笹佐代子 田村恵子 ポストプロダクション:奥祐司 英語字幕編集:佐藤朋子

Suddenly This Overview 場面写真1 Suddenly This Overview 場面写真2 Suddenly This Overview 場面写真3 Suddenly This Overview 場面写真4

第二次世界大戦中、大規模な捕虜脱走事件の現場となったオーストラリア・カウラ。日本人戦争墓地と日本庭園を往還しながら、戦争、植民地主義、和解と、幾層にも堆積した記憶を静かに掘り起こす。

Program B

[上映時間 計76分]

Purée

2020年|DCP|35分

文・語り:永田康祐 出演:きりとりめでる 佐原しおり 菅原伸也 撮影・仕上げ:奥祐司 監督・編集:永田康祐 英語字幕編集:佐藤朋子

Purée 場面写真1 Purée 場面写真2 Purée 場面写真3 Purée 場面写真4

17世紀フランスで生まれた「ピュレ」は、かつて富と権力を示す料理だった。だが今日では、乳幼児や高齢者を支えるケアの食でもある。その対照的な歴史を手がかりに、「食べる」という営みに潜む政治性を見つめ直す。食器や調理器具、作法、他者との関係のなかで絶えず形を変える「主体」と、人間の共同性について思索を巡らせる。

鮭になる

2024年|DCP|14分

脚本・監督:永田康祐 作画・演出:山本悠 音響効果:山形一生 声の出演:遠藤麻衣 製作:十和田市現代美術館 英語字幕編集:佐藤朋子

鮭になる 場面写真1 鮭になる 場面写真2 鮭になる 場面写真3 鮭になる 場面写真4

サーモン養殖場で寄生虫に感染した鮭と、老いた労働者が静かに時間を共にする。資本主義的な価値と生の尊厳のあいだに横たわる緊張をやわらかな手描きアニメーションで見つめる。

Translation Zone

2019年|DCP|27分

脚本・監督・語り:永田康祐 音響:山形一生 ポストプロダクション:奥祐司 英語字幕編集:佐藤朋子

Translation Zone 場面写真1 Translation Zone 場面写真2 Translation Zone 場面写真3 Translation Zone 場面写真4

「チャーハン」をめぐる各言語の呼称の違いや機械翻訳の限界、分子ガストロノミーを手がかりに、翻訳と文化生成の関係を探る。他国の料理を手持ちの食材で再現したり、異なる言語へと訳するときに生じる「ズレ」を、新たな創造の契機として鮮やかに描き出す。

Comments

一匹の魚から世界をたどり、一杯の酒から歴史をひらく。永田康祐の映像では、人とさまざまな生きものが、翻訳、調理、発酵、移動を通じて、異なる時間を宿したまま交差する。見慣れた風景の奥で、無数の生命と記憶が動き出す。

清水知子

東京藝術大学教授/文化理論・メディア文化論

料理や酒には、無数の過去と由来が溶け込み、混じり合っている。
永田康祐の映像作品が、料理と酒をテーマに出現させたのは、
まったく新しい「混合の倫理学」だ。
フードシーンの見え方を大きく変容させるだろう。

三浦哲哉

映画研究・評論

永田康祐の映像作品について真剣に考えようとするならば、それらの映像の刻印を受けることになる。制御できるはずもない無数の形態を飲み込もうとして、私は自分が理性を狂わせるものを背負っていることを自覚する羽目になった。

藤田周

料理の文化人類学

発酵するマッコリの表面から帝国と植民地支配が残した微細な残痕が立ち上がり、逸脱と反転の中で新たな伝統の気泡が息づく。火と水が交差し、古い未来を照らす内奥の視覚的旅路が静かに開かれる。

韓程善

高麗大学校 国際大学 教授

敬称略・順不同

Director's statement

私はこれまで、食べることや食べ物をつくることにかんする作品を制作してきました。このテーマに向きあうようになった理由を考えてみると、それは、この世界を自らの生の実感と連続的なものとして考えたいという気持ちからだったように思います。

私は常々、この世界についてのより明瞭な理解を得たいという動機から制作を行っていますが、実際の世界はあまりに複雑で膨大で抽象的で、ときに自分の生とは無関係なもののようにさえ思えてしまう。この疎外の感覚は、私以外にも感じたことのある人もいるのではないでしょうか。

「食」は、私にとって、自分から離れていってしまいそうな世界を手元に手繰り寄せるための糸のようなものです。翻訳の政治性、ケアと連帯、資本主義による疎外、生態学的植民地主義……これまでの作品のテーマはどれも、目の前にあった食べ物から辿っていったものです。過去を、遠く離れた場所を、他者を、いまここの私の眼前に捉えるための「食」という糸。この特集上映を通じて、この糸を、より多くのオーディエンスの方々とともに一緒に辿れたらいいな、と願っています。

Trailer

Theater

8月22日(土)より ポレポレ東中野ほか 全国順次公開
地域 劇場名 電話 公開日
北海道札幌市 シアターキノ 011-231-9355 近日
東京都中野区 ポレポレ東中野 03-3371-0088 8/22(土)〜
神奈川県横浜市 横浜シネマリン 045-341-3180 近日
愛知県名古屋市 ナゴヤキネマ・ノイ 052-734-7467 近日
大阪府大阪市 シネ・ヌーヴォ 06-6582-1416 近日